ユニークな郵便局大集合

日本全国の変わった郵便局、面白い取り組みを行っている郵便局をご紹介します。

2020年7月3日

金沢法光寺郵便局(石川県)

加賀野菜の名産地に構える接客が自慢の郵便局

加賀百万石の城下町として知られる金沢は小京都とも呼ばれ、雅な風情を残したまち並みは観光客にも人気があります。その郊外にあるのが、金沢法光寺郵便局です。
郵便局のある千坂(ちさか)地区は、加賀野菜のひとつとして知られる小坂れんこんの産地として地元で知られます。金沢法光寺郵便局の風景印にも、小坂れんこんと蓮の花があしらわれています。

郵便局の自慢は、何といっても局員たちの元気な接客です。明るい挨拶が局舎に響き、ロビーではとびきりの笑顔で迎えてくれます。お客さまとは世間話で盛り上がり、小さな用事を見つけてはお話目当てに通ってくれるお客さまもいるそうです。また北陸自動車道のインターチェンジに近く、幹線道路脇の立地のせいか、富山県など近県の利用者の方も多いといいます。

防犯ボランティアで周辺をパトロール

金沢法光寺郵便局の周辺は以前から防災活動が盛んで、今も20人以上の防災士が活動しています。その一人である安藤局長も、地域の人たちに少しでも防災に関心を持ってもらおうと、局内に地域のハザードマップを掲出し、地域の防災講習会にも精力的に関わっていることもあり、地元では“防災士の郵便局長さん”として親しまれています。
さらに安藤局長は、防犯活動にも力を入れて取り組んでいます。先輩の郵便局長から、地域の防犯委員に誘われたのがきっかけでした。防犯委員は自治体や地域の警察と協力しながら、地域の安全を推進する役割を担っています。

主な活動は、地域のパトロールです。毎年7月から11月にかけて、乗用車に青いパトランプをつけて地域の見回りを行います。ほかの防犯委員と協力しながら、防犯意識を高めてもらうため夜のまちで車をゆっくりと走らせます。一見昨日と同じように見える馴染んだ風景も、隅々にまで目を配ると小さな異変を見つけることもあるそうです。
比較的治安の良い地域でもあり、これまで大きな事件やトラブルに巻き込まれたことはありません。けれども新興住宅地ということで、子どもたちも多く暮らしています。真っ暗な公園で遊んでいる子どもを見かけた時はやさしく声をかけ、帰宅を促すといいます。また少年補導員として、金沢駅周辺の繁華街を年に数回歩いて回る活動も続けています。

局長である前に地域の一員として安心なまちをつくりたい

安藤局長が防犯委員になって、気づけば10年以上の月日が経ちました。昨年からは防犯委員長に就任し、各町会の委員をまとめる立場になりました。
安藤局長は定期的に地区内を回り、自治体や警察と連携を図っていく中で、日に日に活動の重要性を感じるようになったといいます。なぜなら、安心して笑顔で暮らせるまちをつくるのは、その地域に暮らす人々に他ならないからです。不安を感じることなく買い物や仕事に出かけられ、子どもたちがのびのびと育つまちにしたいと、これまで取り組んできました。郵便局長である前に地域の一員であるという自覚が芽生えたのは、防犯活動によるものです。
もちろん金沢法光寺郵便局の運営にも、防犯活動は一役買っています。日々の連携を通じて警察から情報が入るようになり、強盗や振り込め詐欺など郵便局で起こり得る犯罪への対策意識が高まりました。職場内とも随時情報を共有することで、万が一何か起きても冷静に対処する心構えにつながっています。
また防犯委員や防災士を続けることで、横のつながりが広がったことも収穫でした。公民館や社会福祉協議会など、地域活動に取り組む団体や関係者との関わりが生まれ、さらにその人たちが自局を利用してくれるようになりました。まちをよく知る存在である郵便局が、名実ともに地域の安全・安心の拠点となっていることに、安藤局長もやりがいを感じています。

とはいえ、活動を続けていて最も嬉しい気持ちになるのは、パトロール中に子どもたちから「お疲れ様」と声をかけられる瞬間です。将来を担う子どもたちを守り、彼らの安心感につながっていると思うと、どんなに疲れていても気力を奮い立たせて頑張れるといいます。
今後は郵便局で防犯イベントを開催するなど、地域の安全と安心を守り続けていく取組みを進めていきたいと決意を新たにする安藤局長でした。


(取材・執筆/たなべやすこ)