ユニークな郵便局大集合

日本全国の変わった郵便局、面白い取り組みを行っている郵便局をご紹介します。

2020年4月28日

大分大道郵便局(大分県)

郵便局が主催のミニバレーボール大会

戦国時代にキリシタンの町として栄えた大分市は、日本における西洋音楽と演劇発祥の地としても知られています。町の中心である大分駅周辺では、近年再開発が行われ、マンションの建設が盛んです。ファミリー層を中心に、新しくこの地域にやって来た人も多くいます。そしてマンションが立ち並ぶ一画に、大分大道郵便局はあります。局内自慢のスポットは、手づくりのPOPです。みんなでポーズをきめた写真を切り抜いたものやカラフルなものなど、社員一人ひとりがアイデアをひねりながら、郵便局のサービスや商品が際立つように配置しています。

一方局長は、郵便局と地域のつなぎ役として、小学校のPTAや社会福祉協議会、町内会などで幹部を長年務めています。またここ数年は、大分駅前で行われる音楽祭に出演するためにバンドも結成しました。さまざまな活動を通じ、局長はイベントが町の人たちをつなげ、活力となることに気づきました。そこである時、郵便局の主催でスポーツイベントを開くことを思いつきます。その名も「大分大道郵便局長杯ミニバレーボール大会(以下局長杯)」です。

大会運営を支える社員たちの熱意

ミニバレーボールは、通常のバレーボールよりも柔らかくて大きなボールで、8人でプレーします。体を動かすのが苦手な人や比較的高齢の人でも、参加しやすいのが特徴です。
この地域はミニバレーボールが盛んで、大分大道郵便局の隣にある小学校の校区だけでも、8つのチームが活動しています。しかし、残念なことに日ごろの練習の成果を発揮する場がありませんでした。そのため、ほかのチームと練習試合をすることはあっても、市の大会となるとハードルが高く気後れするという声が上がっていたのです。
そこで小学校の体育館を借りて、局長杯を行うことにしました。平成26年(2014年)に始まり、これまで5回行われています。

ふだんは3つのチームに所属し、ミニバレーボールはお得意の局長ですが、大会の運営となると話は別です。告知やルールの調整、対戦表の作成、賞品の手配など、開催にはいくつものハードルが立ちはだかります。それをクリアする源が、社員たちの力です。
これまでも社員たちは、主体的に地域活動に励んでいました。例えば、地元の神社の夏季大祭で訪れる人をもてなしたり、小学校では子どもたちに郵便の役割や手紙のおもしろさを伝えたりと、郵便局を身近な存在に感じてもらおうと、工夫を凝らし取り組んでいたのです。そのため局長杯も、自分たちが楽しみながら準備に臨んでいるといいます。

社員とお客さまの距離が近くなるのを実感

社員たちの思いは参加者たちにも通じていて、局長杯の当日は終始、和気あいあいとした雰囲気で進行します。本気になりながらも、笑顔の絶えない1日となるそうです。
さらに嬉しいのは、大会が終わってからの反応です。試合の模様を局内に貼り出すと、「この前はありがとう」と言いながら、多くのお客さまが写真を眺めていきます。そして何より、郵便局のスタッフたちに親しみを持って接してくれるようになったのです。
その瞬間に出会うたび、喜びと同時に、自分たちから地域とつながるしかけをつくることの重要性を実感するといいます。なぜなら新興住宅地として町が生まれ変わる中、住む人のプライバシーが優先され、訪問営業やポスティングなどではつながりをつくるのが難しくなってきているからです。イベントを通じ、地域をよく知るコミュニティーの場としての郵便局の存在に気づいてくれたなら、新しく大分の町に住み始めた人の不安解消にもつながるはずだと、局長は話します。

地域とつながる機能のひとつとして、これからも大会は続けていく予定だそうです。
隣の小学校の体育館から大人のはしゃぐ声が聞こえたら、それは局長杯をめざしてボールを追いかける、町の人たちかもしれません。


(取材・執筆/たなべやすこ)