ユニークな郵便局大集合

日本全国の変わった郵便局、面白い取り組みを行っている郵便局をご紹介します。

2019年8月8日

幌延郵便局(北海道)

子どものアイデアが生んだトナカイの町のサンタクロース

幌延町は北海道北部の、東京23区とほぼ同じ広さの自然豊かな町。人口はおよそ2400人、主な産業は酪農ですが、ここではトナカイも家畜として飼育されています。また冬の厳しい気候でも知られていて、内陸地域は気温が-30℃まで下がることもあるそうです。

また、幌延のクリスマスの風物詩となりつつあるのが、「町役場のイルミネーション」です。点灯式には町長さんたちがサンタクロースに扮し、本物のトナカイとともに登場。ゲームやそり引き体験など、子どもたちが大喜びする催しがいっぱいです。そしてこのイベントの仕掛人が、何を隠そう幌延郵便局。幌延町とのコラボレーションで実現しました。

幌延郵便局

企画の発端は、幌延町で実施した地域創生のアイデアコンテストでした。「幌延町はトナカイの町だから、サンタクロースがやって来たら楽しいかも」という小学生の意見が、みごと優秀賞を獲得します。後日、ある会合でそのアイデアを知った幌延郵便局の佐藤局長は、「話題性があって面白い。郵便局としてできることがあるはずだ」と感じました。

サンタからの返信は点灯式の招待状

佐藤局長がどうにか形にできないかと考えていたちょうどその頃、郵便局では「郵便局サンタ47」キャンペーンの開催が決まりました。「郵便局サンタ47」は、道内各地の郵便局において社員がサンタクロースに扮しサービスを提供するというものです。局長はこれを使わない手はないと考え、子どものアイデア実現に向けて動き出しました。

まずは幌延町や郵便局長会の部会に相談し、強力なバックアップを獲得。その後、「郵便局サンタ47」の参加が正式に決まり、急ピッチで実施する各地との調整を進めることとなりました。

当初は「トナカイそり」で郵便配達を考えていましたが、そりが公道を走るには警察の許可が必要となるため、幌延町から町役場を会場にしてはどうかと提案を受けました。町としては、初の試みとなる点灯式の集客面を強化したいという思いもあったのです。

そこで幌延郵便局では、子どもにサンタクロースへの手紙を書いてもらい、そのお返しに点灯式の招待状を届けるアイデアを提案しました。地域の保育施設に協力を依頼した結果、当日は150人を超える子どもたちや保護者の方で大賑わいとなりました。町長さんや役場の職員からも、「郵便局のおかげだ」と褒められたそうです。子どもたちの書いたメッセージやイラストは、今でも幌延郵便局の大切な宝物です。

地域が幸せになると仕事も楽しくなる

幌延の夜は冷え込み、スマートフォンのカメラも起動しなくなってしまうほどの寒さです。それでもたくさんの子どもたちがそりを体験したり、サンタクロースからプレゼントを受け取ったり、また夜空に打ち上げられた花火を楽しんだりと大いに盛り上がりました。

楽しんだのは、子どもたちだけではありません。実は町長さんと一緒にサンタクロースに仮装した佐藤局長も、ひげや眉毛をつけ、赤い衣装に身を包むことを面白がっていました。今でも印象に残っているのは、点灯式から数日経った後、会場に来られなかった子どもたちにプレゼントを届けに回った時のことです。赤い衣装のまま1日かけて、雪に包まれた町中を車で回ったのです。道行く人は誰もが振り返り、サンタクロースの突然の訪問に子どもたちだけでなく保護者も思わずびっくり。この時ばかりは、本物のサンタクロース気分を味わえたといいます。

イベントは好評で、初開催の2017年に続き2018年も実施されました。2019年の実施は現時点では未定ですが、幌延郵便局では続けていきたいと考えています。なぜなら町の人に楽しんでもらうことが、仕事のモチベーションにもつながるからです。実際に郵便局サンタを通じ、町の人たちから「郵便局に対する印象が変わった」という声を聞くこともあるそうです。地域の人たちの意識が変われば、働く人たちの意識も変わってくるはずです。「それが思いやりのある接客や、快適な環境づくりにつながってくる」と局長は考えています。

地域や郵便局への想いは、まるでサンタクロースのように温かでした。


(取材・執筆/たなべやすこ)