ユニークな郵便局大集合

日本全国の変わった郵便局、面白い取り組みを行っている郵便局をご紹介します。

2019年6月4日

西脇中本町郵便局(兵庫県)

世界に通じる織物の町のある、幅広い世代に愛される郵便局

兵庫県西脇市は県の中ほどやや東寄りにある人口約4万人の市です。市内にある東経135度・北緯35度が交わる地点は「日本のへそ」として知られ、また「播州織」という200年以上続く地場産業が有名です。糸を先染めしてから織る播州織は、深みのある色合いと、糸の種類や織りのパターンによって広がる多彩な色柄が特徴。技術と品質は世界中に認められているものの、安価な海外織物に押され気味なのが課題です。一方で移住してきたデザイナーや地元の若者たちの手によって、新たな播州織の魅力が掘り起こされようとしています。

そのような西脇市の住宅街に局舎を構えるのが、西脇中本町郵便局です。現在の地に開設されおよそ40年。スタッフの間では「自分の家族」を合言葉に、お客さまを迎えています。自局では解決できない困りごとを相談されたときも、関係する機関や施設に電話を入れ担当する方との接点になるなど、細やかな対応を見せています。そうした気配りが信頼を生み、何かとご相談を受けることも多いそうです。

市民ギャラリーと猫グッズがお客さまをもてなす

局内で人気の場所は、地域の方々の作品を展示する窓際のギャラリー。書道教室の作品に写真、絵手紙とジャンルはさまざまです。ご家族やお知り合いの作品が飾られていると知り、ギャラリーを訪れ大切な作品を撮影するお客さまも多いといいます。また自閉症を抱えながら描画活動を続ける女性の作品展を行ったときは、特に大きな反響がありました。さまざまな美術展で入選し、美術館でも展示された作品ですが、郵便局のような公共性の高い場所では初めてとのこと。力に満ちた作品は、多くのお客さまの心を感動で満たしたようです。

また、局内のもうひとつのポイントは、猫をあしらった置物等の飾りつけです。猫のイラストが描かれた手書きのPOPやカウンターに飾られた猫のミニチュアは、訪れる人を和ませてくれます。中にはお客さまからのプレゼントや知らない間に増えた猫グッズもあるようです。

郵便局の特長を生かし、新たなブランド創出を

西脇中本町郵便局では、西脇市のPRにも精力的です。郵便局主催のクリスマスキャンペーンの「郵便局サンタ47」に参加した際は、局前のポストの周りを播州織で飾りつけました(写真)。さらに、現在では西脇市の名物をイラストに盛り込んだオリジナルのマスキングテープや、西脇市ならではのモチーフを集めた風景印も、作成しています。

また郵便局長会の取組みとして、2018年には播州織のネクタイづくりにも挑戦。地区会長主導で、播州織工業協同組合の全面協力のもと、同じ地区の三木市に伝わる三木染型の絵柄を播州織で再現しました。企画の立ち上げから関係各所の調整などで私たち郵便局長も全面的にかかわり、数カ月で商品化させることができました。

これからも、地域にこだわった郵便局活動を続けてまいります。

局長はこの経験を通じ、新たな可能性を感じたといいます。それは、郵便局が地域のクリエイターや職人をコーディネートする、新しいモノづくりの形です。地域に根ざし人々をつなげる機能を持つ郵便局なら、日常では接点が少ない人たちとのコラボレーションを生み、質の高い商品やブランドが育つきっかけをつくれるのではないか。そして、全国に広がる郵便局のネットワークを使い、各地が誇る唯一無二の技術や素材と共創できたら面白いと考えるようになったといいます。

「郵便局が取り持つ縁で、播州織がふたたび世界に羽ばたくことを後押ししたい」と、希望に燃える西脇中本町郵便局。新しい西脇市の名物が生まれるのも、そう遠くはないかもしれません。


(取材・執筆/たなべやすこ)