ユニークな郵便局大集合

日本全国の変わった郵便局、面白い取り組みを行っている郵便局をご紹介します。

坂本郵便局(徳島県)

四季の移ろいが感じられる郵便局

徳島駅からバスに揺られて70分。県内南部には、山に囲まれた人口5000人強の小さな町、勝浦町があります。その一画の坂本地区にある小さな郵便局が、坂本郵便局です。かつては、内陸に続く尾根に沿って栄えていたというこの地域。そこに住む人たちによる郵便局設置の要望が叶い、昭和24年(1949年)に坂本郵便局が開設されました。

同局は、麓から続くカーブに富んだ坂道の途中にあり、建物の周りを大きな窓が囲みます。窓から眺める景色は自然がいっぱい。季節の移ろいが感じられるロケーションに溶け込み、遠方から来た人たちを「こんなところに郵便局があるんだ」と驚かせています。

お年寄りにもやさしいサービスを

周辺の世帯数は180ほどと小さな地区のため、日常はゆったりしているという坂本郵便局。お年寄りのお客様も多く、丁寧できめ細やかな接客を心掛けているといいます。

お客様のテンポにあわせゆっくりお話をしたり、目の高さを合わせるなどの気づかいは当たり前。坂道を歩いて来られたお客様の喉の渇きを潤すために、ウォーターサーバーを用意したり、バスでいらしたお客様には便数が限られているので、車で送ったりすることもあるそうです。お客様との密なコミュニケーションを通じ、嬉しいサービスの形を探求し続けています。

こうした丁寧な関わり方が信頼をもたらし、地域のイベントに呼ばれることも。局長が司会進行役に抜擢されることもあるそうです。

地区一帯がひな人形で彩られる

普段はのんびりとした坂本地区ですが、桃の花が咲く季節には多くの観光客が訪れます。というのも、この時期恒例の「坂本おひな街道」が行われるからです。

坂本郵便局の前を通る道沿いの民家や空き家の軒先にひな人形が飾られる、「坂本おひな街道」。各家庭で代々伝わる人形や、譲り受けた古い人形などを使い、趣向を凝らしたひな飾りが行われています。もともとは勝浦町の人形文化交流館で行われる「阿波勝浦ビッグひな祭り」に関連したイベントでしたが、今や地域のプロ野球チーム(独立リーグ)や学生さんも参加するなど、徳島を代表する行事となっています。

坂本郵便局も、「坂本おひな街道」に毎年参加しています。掲示板や入り口にひな人形を並べるほか、局内にも飾り、さらには局長自ら和服姿でお客様をおもてなしすることも。郵便局全体でひな祭りを盛り上げます。

風景印が移住者と地元を結ぶ

ひな祭りが町の新たな名物になったこともあり、坂本郵便局では2017年2月より風景印を導入しました。名産品の勝浦みかんの外枠に、お内裏様とおひな様が並ぶ可愛らしい絵柄は早くも話題に。押印開始日には1000通もの手紙やはがきが差し出されました。「坂本おひな街道」を訪れたお客様が記念に郵便を出したり、風景印の絵柄を見て郵便局を訪問されるお客様がいたりと、評判は上々のようです。さらに今後は、「坂本おひな街道」を題材としたフレーム切手の開発やフォルムカードの発行にもつなげていきたいと考えています。

ところで風景印のデザインを手掛けたのは、東京から移住してきたみかん農家の女性。彼女のフレッシュな感性に惹かれて風景印を託した結果、他にはない可愛らしい仕上がりになったといいます。


のどかな町の小さな郵便局は、しなやかに地域と人をつなげる場所でもありました。