ユニークな郵便局大集合

日本全国の変わった郵便局、面白い取り組みを行っている郵便局をご紹介します。

竹富郵便局(沖縄県)

伝統的な琉球建築の局舎

沖縄本島の南西およそ430kmに位置する八重山諸島の1つ、石垣島。さらにそこから6km先、フェリーに10分ほど揺られてたどりつくのは、周囲およそ9kmの小島、竹富島です。自転車を走らせれば半日もせずにひと回りできてしまうこの小さな島は、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。このため、道の敷き方や家のつくりに関するルールが細かく定められており、昔ながらの沖縄の風景が今に受け継がれています。

竹富郵便局も例外ではありません。「誰もが使いやすいように」という島の人たちの好意から1993年に現在の地に移設したのを機に、今の局舎ができました。琉球赤瓦の屋根に、丸太の柱が特徴的な平屋建てと、古くから伝わる琉球建築のつくりをしています。周りは琉球石灰岩でできた石垣に囲まれ、屋根の赤と石垣の白のコントラストは見どころの1つ。屋根から来局者を見守るシーサーに加え、局舎前には丸いポストが目印に。今では珍しい円筒形が、島の景観としっくり馴染んでいます。

竹富島の風景を閉じ込めた、大人気のフレーム切手

観光が主要産業の竹富島では、郵便局も観光スポット。島を訪れた人たちが局舎をバックに、写真を撮ることも珍しくありません。郵便局員も、接客の合間には進んで撮影のお手伝い…。もちろん、観光客の旅の思い出になるような商品やサービスを展開しています。

中でも好評なのが、2014年に発売を開始した竹富郵便局オリジナルのフレーム切手。八重山諸島を愛する写真家・大塚勝久氏が撮影した竹富島の風景の数々を、切手という小さなキャンバスに収めました。特に52円切手のシートは、1年間で1500枚以上売れるというヒット商品です。

人気の理由は、切手の素晴らしさに加えて地道な宣伝活動も見逃せません。例えば、局舎正面にある“ヒンプン”と呼ばれる石垣。琉球建築に欠かせない魔除けの役割を果たしますが、掲示板をそこに設け、フレーム切手を紹介しています。撮影のためだけに郵便局を訪れた人たちも、掲示板に気づけば「記念に買っていこう!」と局舎の中へつい足を踏み入れてしまうのだとか。また、観光タクシーの運転手にも協力してもらい、切手の存在を観光客にアピールしています。

郵便局長は島の代表


助け合いを意味する“うつぐみ”の精神が培われた竹富島は、古くから伝わる神事も大切にし、年間20を超える祭事や行事に島民たちがこぞって参加します。郵便局もこれらの行事に加わる中、郵便局長は島民にとって特別な存在なのだそう。

その証拠に、竹富島最大の祭である「種子取祭(タナドゥイ)」では、局長も島の公民館長や小中学校の校長先生たちと肩を並べて、神に祈りの舞を捧げる島民たちを2日間眠ることなく見守る役割を担います。町を歩けば「局長さん」と島の人々に声を掛けられ、地域と親密な関係にある郵便局長。まさに、島の代表なのです。

ハイビスカスが年中咲き乱れ、真っ白なサンゴの砂の道に見るのは、ゆっくりと進む水牛車――非日常の空間に佇む丸いポストを見かけたら、立ち寄ってみてはいかがでしょう。