郵便局の地方創生

地域に根ざす郵便局が行なっている様々なサービスや取り組みをご紹介します。

赤色のソバが生み出す絶景と美味

広島県
八幡(やわた)郵便局 髙木茂局長


  • 地元に群生していた「カキツバタ」再現の取組みがきっかけに
  • 地域の気候を活かし、全国でも珍しい「赤ソバ」を栽培し、特産品に
  • 地域の雇用にも一役

目と舌で楽しむ赤いソバ

私が住む八幡(やわた)地域は広島県の北西部に位置し、1,000m級の山々に囲まれた高原地帯です。その冷涼な気候を活かして、地域の人々と取り組んでいるのが「赤ソバ」栽培です。

もともと八幡地域には湿原を始めとする豊かな自然や、スキー場などがあり、毎年多くの人が訪れますが、9月には目立った観光資源が少ないため集客を高めようと、2014年から始めたのが「八幡高原 赤そばの里」でした。今では栽培地域も広がり、総面積は4ヘクタールに及び、9月中旬から10月初旬には可憐な赤い花が一面に咲き誇ります。遠方からも多くの観光客や写真愛好家が訪れ、毎年、メディアにも取り上げられます。

赤ソバは観賞用だけでなく、食べて楽しむこともできるのが魅力です。地域で運営している「かりお茶屋」で料理を提供しています。新ソバが楽しめる11月は毎年行列ができるほどで、珍しいピンク色のソバを求めて年間3万人が来場します。

地元の特産品づくりに挑戦

ソバは湿害に非常に弱く、収穫量が天候に左右されやすい作物です。昨年(2018年)は、「かりお茶屋」で年間を通して赤ソバを提供できるくらいの収穫がありましたが、今年(2019年)は7~8月に雨が多く、残念ながら昨年の半分ほどの収穫量でした。

そもそも赤ソバは、一般的な白ソバの3~4割ほどの実しか収穫できません。花の鑑賞用として栽培されることが多く、食用として収穫するのは全国的にみても少ないのです。

そうした中で、赤ソバを使った地域の特産品の開発にも取り組み、ソバクッキーなどに挑戦していますが、やはりネックになるのは材料の確保が厳しいことです。もっと作付面積を増やし、安定的な供給を確保することが課題です。

継続してこそ本当の地域貢献

赤ソバの栽培は、耕運から種まき、草取り、収穫まで、年間を通じて地域の方々と協力して行っています。営農推進員の指導を仰ぎ自ら肥料や育て方を研究したり、クリスマスの時期には子どもたちを対象にソバの手打ち体験を実施するなど、地域との交流を大切にしています。また、かりお茶屋では常時10人ほどの従業員を雇用し、地域産業の育成と雇用確保にも一役買っています。

そもそも八幡地域の地域活性化の取組みは、2001年にスタートした「カキツバタの里」づくりが最初です。昭和初期に八幡湿原に群生していたカキツバタを再現するため、オーナーやボランティアの募集、木道の整備とともに、私自身、事務局長として広報誌の作成・送付や切り花の発送などを行ってきました。

今では、「カキツバタの里」「赤ソバの里」の運営を通じて、地元の活性化にお役に立てて良かったと思っています。

私は今年度いっぱいで定年を迎えますが、収穫用のコンバインも購入しましたので、これからも赤ソバの栽培にますます力を入れていきたいと思っています。そして春のカキツバタと秋の赤ソバで八幡の魅力を発信し続けていきたいと思います。