ZENTOKU 2021年春号
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前島密の愛用品拝見❹2021年4月発行 編集・発行・全国郵便局長協会連合会 〒106-0032 東京都港区六本木1-7-27 TEL:03-3505-4830 http://www.postmasters.jp広報 ZENTOKUPostmasters magazine前島密は、残された書や絵、漢詩からも伺える趣味の広い人でした。 特に尺八は、名手とされる二世荒木古童*に師事し、その腕前は素人中5本の指に入るほどだったといわれていました。 客を招いたときなど、なか夫人の三味線と合奏することもしばしばで、夫人と旅行する際には尺八と三味線とを、つねに携えていたといいます。(『鴻爪痕』「逸事録」より) 私人としての前島密を知る手がかりに、小山まつ子**が寄稿した「思ひ出のまゝ」(『鴻爪痕』「追懐録」に収録)があります。その中に「音楽は先づ第一に尺八。名人荒木古童の最高弟です。奥様は三絃の名手であられたので、夏の夜、広い座敷に光りを招き入れて、夕顔、小督の曲などを合奏なさいました。……」との記述があります。尺八晩年の前島密となか夫人*荒あら木き古こ童どうは琴古流尺八奏者の名跡。二世荒木古童(1823-1908)は、最初は一閑流の横田五柳に付き、その後虚無僧になり琴古流の豊田古童の門下となった。三世に古童の名を譲った後、竹翁と名乗る。楽器としての尺八の復興に力を注いだ。**新潟出身の作曲家小山作之助夫人。嫁ぐ前、長年家族の一員のように前島家で生活を共にした。前島密の自伝『鴻爪痕』が昭和30年に改訂再版された際、寄稿依頼を受け執筆された「思ひ出のまゝ」は「追懐録」に収録された。前島密翁の愛用の尺八。写真中央は三つ折りできるように施された二世荒木古童(竹翁)作の尺八。三つ折りの尺八は珍しく、前島の注文で、携帯できるように作られた。〈郵政博物館提供〉〈郵政博物館蔵 現在、前島記念館に展示中〉

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