ZENTOKU 2020年冬号
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リーダーインタビュー11   「民話のふるさと」から   「日本のふるさと」へ―遠野市の現況について教えてください。 遠野は古くから自然・歴史・文化・風土が交錯する地域だと捉えています。北上高地という豊かな自然に囲まれた盆地。盛岡などの内陸部と三陸の沿岸部の結節点、オアシス的な存在です。 そこには遠野南部氏の城下町としての歴史があり、交易の拠点としても栄えた。江戸や京都の文化も入り、伝統芸能も豊富。民間伝承・民話など独特の風土も根づいています。県内でも盛岡人といった呼び方はなくても、「遠野人」といった呼び方は普通にされています。―県内でも独自性の高い地域と言えますね。 その独自性を活かし、かつ在るものに新たな役割を持たせるような視点から市に新たな価値を生んでいきたいですね。たとえば、インバウンドが 岩手県遠野市長本田敏秋さん人口約2万6500人、世帯数約1万700世帯の遠野市。柳田國男の『遠野物語』に見るように数多くの民話・民間伝承・伝統芸能に彩られた同市では、現在、医療・介護分野でのICTの利活用や郵便局との連携事業など、新たな取組みを積極的に推進している。その原動力が本田敏秋市長。東日本大震災から9年、全壊した本庁舎を再建し、積極的に新機軸の施策を打ち出してきた本田市長に、その原動力の〝モト〟は何かをうかがった。「在るものに新たな役割」を!遠野市増えていますが、遠野を「民話のふるさと」を超えて「日本のふるさと」と位置づけて交流人口を増やしていく。遠野に来れば、国内外の人に永遠の日本のふるさとを感じてもらえるとともに、「遠野スタイル」とでもいうべき新たな産業振興の姿をお見せできる。そんなまちづくりをめざしています。―「遠野スタイル」の一環かと思いますが、遠野市ではいま医療・介護分野で「遠野型ICT利活用」に積極的に取り組んでおられます。ICTに着目されたきっかけについて教えてください。 人口減・高齢社会を嘆いても始まらない。現状の中で安心・安全な環境を整えるには、現代の便利な道具であるICTをどう活かすかと考えました。具体的に行った施策は二つ。一つは一〇年ほど前から進めている「遠野ICT健康塾」。これは一言でいうと、消費カロリーなどが表示されるデバイスを市民に持ってもらい、日頃の健康管理に活かしていただく取組みです。もう一つは、「ねっと・ゆりかご」という遠野市助産院制度。実は一五年ほど前に遠野市には産婦人科の医師がいなくなった。そこで一二年前に市の職員として助産師を採用し、市外県内の医療機関と連携して妊産婦が安心して診察を受け、出産に当たっても迅速かつ安全に対応できる仕組みを整えてきました。06

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