ZENTOKU 2019年夏号
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離島の流通システムに、郵便局物流ネットワークを活用して地方創生へ松まつ江え殿との町まち郵便局長江え角すみ 直なお記き*3 弘法大師の命日(旧暦3月21日)に、島のお堂やお地蔵さんを廻ってお参りする伝統行事。 ご馳走を振る舞ってもらい、食べ終えると次の地区に移動する。*4 A級グルメ…地域の良質な特産品による「その地でしか味わえない食や体験」を意味し、これを永久に残そうという意味も込められている。北海道鹿しか部べ町、福井県小お浜ばま市、島根県邑おお南なん町、宮崎県都つ農の町、島根県西ノ島町の5市町が参画。郵便局の地方創生地方創生モデルの町海士町の「岩牡蠣プロジェクト」 前町長の山内道雄氏が先頭に立ち、役場の財政改革と産業創出を行い、財政破綻や過疎化の危機を脱した海士町(中ノ島)は、地方創生のモデルとして国内だけでなく海外からも視察に訪れる人が後を絶ちません。Iターン等をきっかけに島外から移住してきた人は住民の二割近くを占めるそうです。現在JICA*1から派遣された二名が役場で働いており、海外との交流も広がっています。 今、海士町(大江和彦町長)では、ブランドである「岩牡蠣・春香」の増産と販路の拡大に力を入れています。海士町はCASシステム*2をいち早く導入することにより、流通システム上、離島では難しかった魚介類の獲れたての味を全国へ届けることが可能になりました。全国の有名レストランなどから高い評価を得ており、知名度も浸透しつつあります。 岩牡蠣は出荷するまで三年を要するので、増産体制の確立を見据え、郵便局では、日本郵便中国支社と協力し、ふるさと小包を利用し全国発信する「岩牡蠣プロジェクト」を推進しています。これまでの郵便局が持つノウハウを生かし、生牡蠣ゆうパックの商品化も視野に入れています。生産者の声を聞き、海士町役場と打合せを重ね、島嶼の距離的ハンデを縮めるために、郵便局ネットワークをどのように生かしていくか検討を進めています。Iターンで地域活性知夫村の主要産業は畜産 知夫村は、知夫里島を行政区域とする人口約六〇〇人の村。島の主要産業は畜産で牛が約六〇〇頭飼育されています。村の人口も一時期減少傾向に陥ったものの、地域活性化施策によるIターン受け入れが功を奏し増加に転じています。Iターンで訪れた人は定住率が高く、毎年人口増となり、現在の村民は六四〇人を超えています。お大師参り※3に代表される島民のおもてなしの心は、Iターン者にとっても居心地の良い環境をつくっていることは間違いありません。 知夫村の郵便局は、知夫郵便局しかなく、島民の拠り所であるだけでなく、観光客にとっても地域情報収集の拠点になっています。西ノ島町は「にっぽんA級(永久)グルメのまち連合」に参画西ノ島町は、後醍醐天皇が御配流となったと伝えられる島です。海士町には後鳥羽上皇が御配流となった歴史がありますが、高貴な方が暮らすに十分な水と食料に恵まれていたからという説もあるくらい豊かなところです。二〇一八年十一月に関係五自治体で「にっぽんA級(永久)グルメ*4のまち連合」が設立され、水産業を中心とした地元食材や郷土料理を活用した取組みが進められています。〜隠岐諸島 島前三島の郵便局〜松江市を中心に、隠岐諸島を含め、出雲東地区の郵便局を統括しています。全国から人が集まる海士町ですが、隠岐諸島は4つの島(自治体)からなっています。4つの島は協力しながらも、自立した個性を持っています。今年度は、4つの島にそれぞれ新任女性局長が誕生しました。女性パワーに期待しています。*1 JICA…独立行政法人国際協力機構。政府開発援助の実施機関の一つであり、開発途上地域等の経済及び社会の発展に寄与し、国際協力の促進に資することを目的としている。*2 CASシステム…磁場環境で食品を冷却することで細胞組織を壊すことなく冷凍できる。医療の移植技術の分野でも応用されつつある。海士町ではシステム・建物まで含めて5億円を投入するという大英断だった。地方創生ケーススタディ❾10島根県島どう前ぜん島どう後ご竹島

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