ZENTOKU 2018年春号
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JPビルマネジメント代表取締役社長・野村洋さんの意見が大半を占めていました。前島は、大隈重信と伊藤博文に請われ、日本最初の鉄道建設にあたっての費用対効果の収支概要を、一日で『鉄道憶測』という概算書にまとめました。前島三十六歳の時です。この文書を元に建議書が作成され、鉄道が敷設されることになります。工事自体も、会議での了承が得られてからわずか二週間足らずで着工されています。❖ ❖ ❖ 赤レンガとの対比が美しい白いタイルのKITTEの前身、旧東京中央郵便局は、近代モダニズム建築の旗手・吉田鉄郎*4の設計により昭和六(一九三一)年に完成しました。外見の美しさに加え、郵便局の物流に必要な機能に従いつつ(当時、遠距離あての郵便物は鉄道輸送されていたため、東京中央郵便局と東京駅までは地下トンネルで直結されていた)、自然の通風や採光に配慮した大きな縦長窓を採用し、古典的な美しさと近代的な萌芽を併せ持つ設計になっています。“日本の新建築の最高峰*5”とも称えられ、後の郵政建築の基本となっていきました。KITTEは、旧東京中央郵便局の一部を残した形で再構築されましたが、郵政建築の伝統と商業建築という新たな機能が見事に融合した空間となっています。「公共的な性格を持つ建物は気持ちよく安全であり、安心できる場所であるべきです」と語るのは、JPビルマネジメント代表取締役社長・野村洋さん。KIT日々歴史を刻む東京駅。濱口雄幸首相襲撃現場((右)構内:正確には現場の地下にあたる)、原敬首相刺殺現場((左)丸の内南口きっぷ売場付近)を示す案内プレートもある。駅構内には、復原された丸ドームをかたどったポストも設置されている。JPタワー・KITTE*4 1894年、富山県の郵便局長の家に生まれる。東京大学建築科を卒業後逓信省に入り、多くの郵政建築を手がけた。*5 ドイツの建築家ブルーノ・タウトが東京中央郵便局を見て“日本の新建築の最高峰”と評した。丸の内南口改札口横には大正時代製造の丸ポストが設置されている。東京駅開業100周年記念として、2014年に設置された。東京中央郵便局長・金児博幸さん。「東京駅の真ん前という立地から、お客さまはひっきりなしです。全国トップの物販実績を誇ります」前建築を残した1階部分にある東京中央郵便局窓口。東京駅丸の内駅舎のフォルムカード吉田は「柱」に八角形を採用していた。アトリウムの床に配置された通気口の形と天井からぶら下がるボールチェーンが、かつての柱をイメージ。辰野金吾が手掛けた、佐賀県「武雄温泉楼門」をデザインしたフォルムカード。風景印は東京中央郵便局のもの。天平式楼門の脇に、東京駅と同様の丸窓がある。楼門2階天井に東京駅にはいない「子」「卯」「馬」「酉」(透かし彫り)が配されていることで、注目を浴びている。「子」「卯」04

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