ZENTOKU 2017年9月特別号
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地方創生❶ 十日町市 十日町流の地方創生ですが、私は突き詰めるところ、人口を取り戻さないとどうにもならないという思いがあります。今年は明治一五〇年という節目の年ですが、明治開闢以来ずっと、真ん中へ、真ん中へという大きな人の流れがありました。人のみならず、物、金、さらにエネルギーもです。この大きな奔流を何とか変えないと、日本そのものにガタがきてしまうのではないかとさえ思います。 その大きな認識を皆さんと共通認識として持つなかで、十日町流の地方創生についてお話をさせていただきたいと思います。わが故郷の信濃川 十日町市は新潟県の南に位置し、その真ん中を信濃川が貫流しています。人口は約五万五〇〇〇人、世帯数約二万世帯。残念ながら高齢化率がずいぶん高くなり、この五月末現在で三六%を超えました。 非常に美しいまちで、十日町盆地を貫流する信濃川が我々のふるさととも言えます。この信濃川のおかげで、いろいろな産業も成り立ってきたと言ってよいでしょう。「魚沼産コシヒカリ」をはじめ織物業など、古くからの伝統的な産業で豊かに彩られた地域なのです。 市の西部に、松之山温泉という素晴らしい温泉郷があり、その近くに美しいブナ林があります。あまりにも美しいものですから美人林と名づけられ、最近では入場規制をしなければいけないほど多くの方にお越しいただいていま関口芳史さに触れていただけるような芸術祭です。「人間は自然に内包される」を基本理念に、自然に対する畏敬の念を忘れず、里山の美しい自然を次の世代にしっかりと受け渡すことが我々の責務だと考えています。そのなかで、人口減に悩む過疎地域を何とか元気にさせようという思いで進めています。 地域、世代を超えた人びととの協働では、外国人が高齢化の進んだ集落に突然現れ、「作品を作らせてくれ、置かせてくれ」と、話を始めたことがありました。最初はおじいちゃん、おばあちゃんがきょとんとするほかなかったのですが、そこに介在してくれる若者や芸術を愛する皆さんに加わっていただき、世界の最先端で活躍している芸術家とお年寄りが仲良くなって地域が元気になる、お年寄りに笑顔が戻る、という取組みになっています。 産声を上げてから二十年が経ち、この頃は表彰されることも増えました。二〇一六年は「ディスカバー農山漁村の宝」(内閣官房及び農林水産省)という大きな賞をいただきました。そのほか、「手づくり郷土賞」(国土交通省)も受賞し、芸術の観点からも評価をいただいています。 作品を少しご紹介しましょう。大自然の中にぽつんと現れる「花咲ける妻有」という草間彌生さんの作品です。草間さんは、文化勲章を二〇一六年に受賞され、大御所と呼んでいい方です。その作品が突然、里山の自然の中に現れる。こうしたものを目当てに各地を回り、里山の美しさ、人との交流を図っていただきたいという狙いがあります。 「脱皮する家」という宿泊できる作品もあります。日本十日町流の地方創生十日町市長す。こうした里山がしっかりと残っているのも十日町市の特徴です。 その美人林のそばにある「星峠の棚田」は初夏には朝の二時か三時から、多くの方が撮影に来られるので、トイレも作りました。あわせて募金箱も置かせていただき、環境保全に使わせていただいています。 一つ市のセールスをさせていただくと、十日町市博物館に所蔵する国宝・火焔型土器は発見第一号で、残存率が九五%以上、縄文時代の土器では常識外れの美品です。パリに持って行ったところ、当時のシラク大統領が一時間もの間動かなかったという美しい国宝を所蔵しています。 この縄文文化を二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの機会に全国へ発信すべきというのが私ども十日町市の主張です。できれば開会式の聖火台にこのモチーフを採用いただきたいと、PRさせていただいております。アートが紡ぐ地域の再生 地方創生の取組みとして、二つ紹介したいと思います。一つは、アートを道しるべに地域再生を図る「大地の芸術祭」という取組みです。 大地の芸術祭というのは、三年に一度開催される世界最大級の国際芸術祭で、十日町市と隣接する中魚沼郡津南町にまたがる越後妻有地域を中心に、広さ七六〇平方キロメートル、東京23区の一・二倍の里山にアートをたくさん散りばめ、それを道しるべに多くの皆さまから里山の美し―地域活性化・人口減対策への挑戦―十日町市新潟県06

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