ZENTOKU 2017年9月特別号
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とだと思います。 私がいるところは東北といっても会津で、人口が三十万人を割って二十七万人、面積は千葉県と一緒です。つまり広くて人口が少ないという過疎地の典型ですが、そこに十七市町村があります。会津若松市で十万人ですから、残りの十六市町村で二十万人もいません。 ですから地方創生というのは喫緊の課題です。郵便局が積極的に関わった例ではないのですが、会津に湯川村という人口三〇〇〇人強の村があり、お米のおいしい村として知られています。その村がふるさと納税のときに、返礼品としてお米を六十キロ送った。ところが毎年二十件ぐらいしか要望がこない。すると郵便局の非常勤の人が「六十キロをいっぺんにもらったら迷惑だ」と。村長は少量だと送料がかかって赤字だろうと思っていたそうですが、次の年から二ヶ月ごとに年六回送るようにしました。すると、今は三億円集まるようになりました。八〇〇〇件、「ゆうパック」だと三万個分です。そのすべてを農業者育成に使っています。 福島県の米は残念ながら原発の影響で安いのですが、会津米は今きちんとした値段で東京の納税者、消費者に買っていただいています。 特に会津は「村」の情報がたくさん集まるところ。その情報を地方創生あるいは地域づくりに活用できないかと常に考える発想が必要だと思って地方創生を進めています。「交流、情報、継続」を軸に「住んでよし、訪れてよし」を実現する司会 では二つ目のテーマですが、大きな力を持つ郵便局が地域にとってどういうポジションになればよいのかという議論を深めていきたいと思います。まず、佐藤理事からお願いします。佐藤理事 私も二〇一六年に阿智村に行って、いちばん驚いたのが「会津にも星はある。なぜ阿智村の星だけがこんなに人を集めたのか」ということです。地域にあるものを地域の人にどう感じてもらえるか。つくり上げるというよりも、あるものをどう活かすか。それさえ考えていけば、必ず地域は生き残ることができ、そういう教育をすれば必ず子どもも帰ってきてくれると考えています。阿智村に学んで、各地域の局長に伝えていることは、そういう視点が観光にもつながるということです。 会津の下郷町にある大内宿という地区にはわずか四十世帯のかやぶき屋根に年間八〇〇万人の観光客が集まる。昔のそのままを残す、残す努力をすれば、それだけの観光客に来ていただける好例です。やはり地元にある歴史、文化などを大事にしていけば地域創生につながっていくのではないでしょうか。司会 続きまして長谷川理事、お願いします。長谷川理事 観光とか集客よりも、いざ何かがあったときに郵便局の力というのは実はすごいということを披露しましょう。 東日本大震災があったときに、九十九里浜一帯の釣り船のお客さんが激減しました。その対策が何か打てないかと、首長と観光協会、漁協が釣り船の関係者の方たちと話す中で、だれでも簡単にできるようなアジ釣りを、しかも安い料金でやってみよう、郵便局に集客と受付などを頼めないかという話がありました。これは今も続いていて、年に二回、八〇〇人から一〇〇〇人の方に釣りにきていただいています。船が七十艘で、一斉に漁港から近場に出る。それによって釣り人も徐々に戻ってきて、遊漁船組合もなんとかここまでできるようになったと喜んでいます。郵便局の店舗の力、人の力は、まさに無限です。司会 続きまして山﨑副会長、お願いします。山﨑副会長 私は二〇一六年まで地元の観光協会の理事を仰せつかっていました。やはり地場産業をどうやってつくっていくのかという点が課題です。越後三山枝折峠付近。雲海が山を覆う秋色に染まる妙高山ブナ林に黄葉・紅葉が映える津南町七ツ釜。豊かな水が美味しい名産品を生む17

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