ZENTOKU 2017年9月特別号
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んが、このサービスを通じて、個別の事情や問題を克服していかなければ、我々はこの少子高齢化の時代で新たな信頼を勝ち取るということは難しいと考えているのです。 もう一つの「拠点」については、金融機関、生命保険会社、「ゆうちょ」、「かんぽ」以外とも連携しながら、地域に必要なサービスをできるだけ多く提供し、地域の方が不便を感じないようにするのが郵便局の使命だと考えています。こういったメニューをこれからもどんどん増やしていきたい。そのなかで、それぞれの地域にメニューを選んでいただく形にしたいですね。 拠点の基本的なスタンスとしては、地域・地方行政、市町村の行政とできるだけ近い存在でありたい。地域社会では、人口減少などに日本中が悩んでいる状態のなかで、いろいろな機関がどんどん退いていく。しかし、退くに退けないところが二つあります。それは市町村の役場と郵便局です。我々は退くつもりはありません。残っている我々がその地域を守っていくことは、極めて意味深いことなのです。 なお、「情報発信」については、郵便局長が一番お得意の分野ではないでしょうか。いろいろな地域産品を全国に紹介するなどの情報発信を全国に向けて行う。これはまさに二万四〇〇〇のネットワークがあるからこそできることです。 私から局長の皆さんにお願いしたいのは、より一層地域に根ざしていただきたいということ、全国の横の連携を強化していただきたいということです。地域の悩みというのは、その地域だけではないはず。必ず似た悩みを抱える地域が全国どこかにあります。どう悩み、どう解決したか。横の連携を使って解決に力を尽くしていただければと思っています。司会 ありがとうございました。地方創生から退かない、やり続けるというお話をいただきました。続きまして、まさにその主役である局長会の代表の方々にお話をいただきたいと思います。それぞれの地域、とりわけ地方会において現在取り組まれている施策や課題、首長の方々や会社のご意見をいただいた部分で今後の郵便局の活用とか郵便局の持つ力とは何かという視点からお話をいただきたく存じます。では、山本副会長からお願いします。山本副会長 私は局長会で地方創生担当を任されています。局長会が地方創生に取り組むようになったきっかけは、二年ほど前、日本創成会議が通称「増田レポート」を書かれ、そこから一気に地方創生の動きが加速しました。そして我々局長会として何ができるかという議論を進めていきました。 二〇一六年の秋には長野県の阿智村で「そうだ! 星を売ろう」という地方創生の成功例を実際に現地に行って村長さんや中心となって働いた社長さんのお話を伺いました。その話を聞くと、郵便局長として本当に核になってできるのか、郵便局の仕事をしながら、本当にそこまで地方創生に入り込んでいけるのかと非常に不安を抱きました。 そのなかで結論としては、まず各地方公共団体との関係を密にして、我々が持つ公的な使命、ユニバーサルサービスの提供あるいは二万四〇〇〇のネットワークの機能を発揮する方法があるのではないかということです。そして、その結論から、各県あるいは各市町村と協定あるいは包括協定を結んでいただきたいと局長会で伝えました。これは包括協定を結ぶことが目的ではなく、協定を結ぶことによって各自治体との関係がより密になり、連携を強化して郵便局が地域のお役に立てる立場になって役割を果たしていくことが目的です。 私どもは郵便、貯金、保険の三事業のユニバーサルサービスを義務づけられています。その三事業の基本サービスだけではなく、地方創生に関わるさまざまなサービスや活動によって、地域の方々からなくてはならない郵便局として、その存在価値をより高めていきたいというのが最終的な目的です。 今は自治体と結んだ協定の洗い直しを専門委員会で行っています。すでに結んだものについてはバージョンアップし、協定の結び直しや具体的な取組みを見直しています。この協定を締結したあとに、まちづくり協議会に代表されるような地公体との打合せを定期的に重ね、各地公体のオーダーを聞いてそれに応えていくのが我々の次のステップです。 我々には二万四〇〇〇あるいは直営店二万のネットワークがあります。このネットワークを活用していくことによって日本中に情報が発信できます。数の力というのは大変大きい。さらにいえば、拠点としての郵便局だけではなくて、そこで働く局長、社員、その家族、あるいはOBを含めると大変な数のネットワークがあります。これらを有効に使って地域のお役に立てるのではないかと捉えています。 一つ、石川県の例を挙げましょう。石川県とは二〇一五年の三月二十四日に移住定住人口確保に対する協定を締結しました。県内の郵便局長全員が移住サポーターとして県から指名を受けています。これは石川県へ移住定住を希望する方の定住支援として、地元をいちばん熟知している局長がその方々の相談相手になるというスキームで協定を結んだわけです。今はそのシステムをバージョンアップすべく定期的に検討を重ねています。 二〇一七年の三月二十二日には石川県と包括協定を結びました。十一の基本項目の中に、三十の細部項目があり、その項目のトップが観光です。地方創生における観光が、地域交流、移住定住にも大きな力を発揮すると考えています。 具体的に申しますと、世界に地中海、カリブ、北極海の三大クルーズというのがあります。そこに、日本海クルーズを加え、世界四大クルーズにしたいという大きな野望を15

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