全特 2017年2月特別号
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 長野県阿智村は、六十年前に会地村・智里村・伍和村が合併して発足し、十年前の二〇〇六年に浪合村を編入、その三年後の二〇〇九年に清内路村が編入され現在の姿になりました。 村内には五つの郵便局があり、私が局長を務める浪合局は旧浪合村の地区をエリアとしています。とうもろこしの販売ルートを開拓 浪合地区の特徴を一言で述べると、海抜が九六〇メートル内外で「高原の集落」ということができます。この浪合地区の特産品の一つが、とうもろこし。『浪合のとうもろこし』として地元では有名で、寒暖差を活かした甘みは「一粒一粒がしっかりしていてみずみずしく、噛むたびに爽やか」だと親しまれています。 しかし、ご多分に漏れず、浪合地区も生産農家が減少しています。郵便局長として地域の活動に参加していると、農家の方から「後継者がいないので畑を止めようと思う」といった話が聞かれます。 そうした意見の一つに、「とうもろこしをつくっても、販売ルートが確保できない」という声がありました。三十歳の若手の農業家で、お父さんは大工。その大工を継ぐことを考えたものの「人口の少ない地区に大工は二人要らない。お前は別の仕事に就け」と父のアドバイスを受け、とうもろこしの生産を始めたそうです。 なんとか販売ルートを確保できないかと考え、地元郵便局として協力することにしました。まず、『南信州うまいんだに』という郵便局のネットワークを活かしたカタログ・ネットショップで展開し、独自にチラシをつくって販売しました。 実は「販売ルートが確保できない」という言葉は「販売」時点だけを意味しているのではありません。配送や集金、顧客管理なども含めた販売なのです。その点で郵便局の地域に根ざしたネットワークは一日の長があります。地域貢献の一つとして、そのネットワークを存分に活かそうと考えたわけです。 二〇一六年から始めた『浪合のとうもろこし』の販売は、一年で六〇〇個の出荷になりました。その実績を受け、阿智村の清内路地区の豆腐の生産業者から販売の打診が入り、現在調整中です。 阿智村の郵便局から特産品の販売には、開発・営業・配送・集金などトータルサービスで対応し、地方創生に繋げていく浪合局長 稲垣一実4ラジオ体操の裏方としての活動 地域貢献として郵便局が協力できたことの一つに「ラジオ体操」もあります。 二〇一六年夏、NHKのラジオ体操が阿智村で巡回実施され、合計で村民約九〇〇人が参加しました。その準備や参加者への地元野菜のお土産の配布など、村役場のスタッフとともに裏方に回り、スムーズな運営に協力できたと自負しています。 一つひとつの活動は地域貢献としては大きなものではないかもしれません。しかし、一方で浪合郵便局の人員は局長の私とスタッフの計二名。おのずとできることにも限界があります。 そうした陣容のなかで、これらの地域貢献をどのように地方創生に繋げていくか。私も阿智村出身者として地域の皆さんと同じ目線で地域貢献・地方創生に取り組んでいますが、一つは横に展開していくことと、もう一つは縦に展開していくことがあるでしょう。 横の展開とは『浪合のとうもろこし』を皮切りに、清内路地区の豆腐など地元の名産品を見つけ出し、販売ルートに乗せること。物販を通して広く地域をPRしていくことです。 縦の展開では、物販の部分を担うだけではなく、それを村全体が取り組む地域づくりにどう結びつけていくかということです。たとえば、阿智村では星をデザインした切手をつくりましたが、切手をつくっただけで終わらず、「地域のPRのために、その切手をどう色づけていくか」ということです。 このような取組みを今後も継続していきます。※地域貢献・地方創生委員会では、このような物販の取組みやオリジナル切手・年賀葉書の作成のほか、介護(見守り)支援への参画、出資、地域の拠点づくり、行政および行政サービスとの連携、イベント・セミナーの開催などについても各地域の報告があり、討議された。09

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