全特 2017年1月冬号
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 前島(この時はまだ上野房五郎)は、箱館に向かう前、軍艦操練習所入所時の苦い経験から、武士らしい名前“巻退蔵”と改名します。幼き頃より素読で学んだ『中庸』冒頭の章句「……偏らざるをこれ中と謂い、易わらざるをこれ庸という……これを放てば則ち六合に弥り、これを巻けば則ち密に退蔵す……」から「巻退蔵」と名乗ります。 後のち「密」と名乗り、長男に「弥」と名付けていますが、やはり『中庸』から引いたものだとわかります。 前島は、お金に変えられるものはすべて変え、房州から、常陸を経て仙台へ。さらに箱館を目指しますが、途中、芭蕉の俳句で著名な山寺に足を伸ばします。水の代わりに携帯していたお酒を飲んでいたため、ふと気づくと、路銀はおろか、紹介状すら見当たらないという大失態を犯してしまいます。箱館丸にほど近い、北海道内最初の郵便局・箱館郵便役所のあった場所。もともとは船舶、積荷、旅人を検査して税金を徴収するための「沖之口役所」があった。現在の建物は大正15年に建てられたもの。今は臨海研究所として使用されている。建物の敷地に「箱館郵便役所跡の碑」が建っている。温泉地・湯の川と函館駅、観光名所を結ぶ路面電車。現在2路線運行されており、札幌市電とともに北海道遺産の一つに選定されている。函館公園内にある博物館。旧函館博物館1号、2号は現存する日本最古の博物館施設である(現在は建物のみ)。13245武士らしい名前に、巻退蔵と改名すべての財産をなくし、村そん夫ぷう子しとして講義をしながら旅費をかせぐ前島密(巻退蔵)が日本を二周した箱館丸(模型)。西埠頭の片隅に置かれている。ドックに停泊する船と比べると、さほど大きくはないが、当時は洋式の帆船は斬新で、寄港先で人びとの注目を集めた。鐘の音が鳴り響く聖ハリストス正教会。地の利もあり、ロシア帝国はかなり早くから箱館を訪れている。建物にもロシア正教の影響が色濃い。同じ港町・長崎とは趣を異にする。写真提供:一般社団法人函館国際観光コンベンション協会日本三大夜景の一つに数えられる函館山の夜景。函館山は標高334m。昼間も遠望が肉眼で美しく見渡せるため、箱館山奉行所は国防の意味から、組織の機能は五稜郭へ移された。67814523保科学芸員04

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